這いずり女と同居したマンション

十数年住んでいたマンションを引き払い、実家に帰ってきた。
夏場は暑さで死にそうになりながら起床していたが、それなりに快適な部屋だった。

実家に帰ってから3～4ヶ月程過ぎた頃、前の部屋の管理害者から電話があった。

新しく越してきた人が、1週間から10日ほどで出て行ってしまうらしい。
家賃が相場よりずっと安いため、すぐ次の入居者は決まるが、定着しないようだ。
気味の悪いことが起こっているらしいが、私は十数年も住んでおり、何も無かったか？と聞かれた。

変なことはあった。ずーっと。でも霊的なものとは思っていなかった。
まず、隣の誰も住んでいない部屋から何かをひっかく音がする。ガリガリ、ガリガリと。
ガン、ガン、ガンと強く叩かれたり、コンコンと弱く叩かれることもある。
ネットで調べたところ、上の住人が水を流した時に、壁の中に通っている配水管が壁に触れてそうなることがあるようだ。
解決！理由さえ分かれば、別に怖くは無い。

次に、夜中に玄関のドアを、ドゴンッと思いっきり蹴られるような音がして、ビクッとすることが何度かあった。
反射的にドアを開けても誰もいない。前は金網、他の部屋に入った形跡も無い。
ネットで調べた。気温の上下により、部屋と外の気圧差から、玄関のドアが膨張したか、へこんで音が出ることがあるらしい。
解決！何者かに攻撃されているのでは無いとわかり安心。

入居して数日で、ユニットバスの電球が割れる。ワットやボルトなども調べて、規格を合わせても割れる。
ムカついたのでガラスでは無い、絶対割れることの無い電球にすることで解決。

深夜に赤ちゃんの泣き声がずっと聞こえる。
1階に住んでいたので、ベランダのすぐ前の庭から聞こえる気がするが、誰もいない。
ただ、近所に小学校があるため、近所に小さい子のいる家族が引っ越してくることが多い。
どこかの家の赤ちゃんだろうと思い、ベッドホンをして解決。

テレビの調子がおかしい。突然消えることはしばしば。時には画面が縦に潰れ→横に潰れ→縦に潰れ･･･を何度か繰り返してから消える。
それはテレビの故障と思えば納得できる。ただ、テレビが消えた後、画面に映っている自分の後ろに誰かが立っている。
壁により掛かっているので後ろに立つスペースは無い。
ただ、まばたきをすると消える。霊がまばたきに合わせて消えるはずは無いので、テレビの映像が網膜にでも焼き付いていたものと思われる。解決。

一人でいる時に女性の声がしばしば聞こえる。もちろん誰もいない。鉄筋コンクリート造りなので、隣の部屋の声でも無い。
これは声に聞こえるだけで、隙間風や冷蔵庫などの電気音と思われる。誰もいないのに声がするわけないからね。解決。

こうしてちょっと気になることはあったが、心霊的なものは何も無いと思っていた。

不動産の管理害者が入居者に聞いた話では、女性が這いずり回っているらしい。
私は1度も見たことは無かったが、十数年間、気付かずに同棲していたのかも知れない。残念。

誰も住んでいない隣の部屋から壁を叩かれ、声も聞こえたらしい。
ふと気がつくと、後ろに誰かが立っていることもあったらしい。

「十数年住んでて、このようなことはありませんでしたか？」と聞かれ、普通に「ありましたよ」と答えました。
ただ霊的なものとは思っていなかったですと。
今度お祓いしてみますとのことで、電話は終了しました。

その後、お祓いをしたとのことです。
ただ、次に入った人はちょっと長く持ちましたが、それでも2ヶ月ほどで出て行ったそうです。

何か思い当たることはないかと聞かれましたが、入居当時からあったことなので、前の人に聞いてみては？と伝えました。

前の人は行方不明になったそうです。消息が分からなくなり、家賃がたまってきたので、保証人に払ってもらい、そのまま解約したらしいです。
部屋で何かあったわけでは無いので、事故物件にもならず、事前に聞いてもいませんでした。

管理害者とのやり取りはここまでです。
しかし、住んでて一番驚いたのは、ある晴れた日の夜、会社から帰ってきて玄関を開けたら、
部屋の中に土砂降りの雨が降っていたことです。
玄関を開けたら、川のように水が溢れてきました。
天井から雨が降っているのです。何を言っているのか分からないとは思うが、ありのままに起こったことを話すぜというポルナレフ状態でした。
上の住人に聞いたら何も起こってはいないと。とりあえず管理会社に連絡して1時間後に業者到着。
部屋の上に通っている水道管が外れていたらしいです。
部屋はびちゃびちゃでしたが、冬じゃ無くてよかった。